「結果から言うとダメでした。」

5月、数ヶ月かけ描いた作品が連載会議におちた。

その日から体から生気が抜けていった。漫画で食べて行こうと決めた日から、

自分の生活は良くも悪くも漫画中心だった。

逆に言うとその夢を失えば、いとも簡単に堕落していく。

編集者からボツを食らった末に、やっとだせた連載会議。

だがその壁はいとも容易く自分を拒み、また振り出しへと戻った。

「もうどうしたらいいんだ」

漫画のことを考えるのも嫌で、でもただ日常を送っていくのも苦しく、

どうしていいか分からなかった。

そんな時、ふと旅に出る漫画を思い出した。全て嫌になっていた自分は

半ばヤケクソで決めた。 

自分も旅に出ようと。

そうと決めたら、その漫画と同様Twitterのアンケートで行き先を決め

翌月旅に出た。行き先は和歌山。

梅ぐらいしかイメージがなく、特に行きたかったわけじゃない。

でも今、行って良かったと強く思う。

山奥にあった世界文化遺産の神社、モダンで美しい駅前の巨大な図書館

めちゃくちゃ美味かっためはり寿司、ちょっと冷たいバスのおじさん

行かなければ出会わなかった景色、味、人。そのどれもにワクワクした。

帰りのバスの中、旅のことを振り返りながら改めて漫画について考えた。

自分はずっと長い間、面白い設定や斬新な企画を捻り出そうとしていた、

つまり編集者を通すため漫画を描いていた。

それは間違いじゃない、けどその中で心が死んでいったのも事実だ。

読者が面白いのは大前提だ、けどそれ以上に自分が楽しくなくちゃ

何の意味もない。

だから決めた、自分が体験して本当にワクワクしたものを元に描こうと。

作品の皮の部分、設定なんかはキャッチーで読者を惹きつけるためにある。

けど骨の部分、作品の骨子に自分の熱が入ってないと絶対に面白くならない。

そこは絶対に忘れちゃいけないんだと、この旅で気付いた。

だからといって、すぐ面白いものが描けるわけじゃない。ボツも食らうだろう。

でもこれからは簡単には腐らないと思う。

自分の中で、描く意味がなんとなくでも見つかったから。IMG_20200624_172706_138